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朝起きられない、立ちくらみがする、倦怠感が取れない…もしかしたら、それは「起立性調節障害」のサインかもしれません。特に思春期のお子さんに多く見られるこの症状、実は血圧の変動と密接な関係があります。このページでは、起立性調節障害の症状や原因、血圧との関係性、そして具体的な検査方法や治療法まで、わかりやすく解説します。起立性調節障害は、自律神経の乱れによって引き起こされ、血圧のコントロールがうまくいかないことが主な原因です。朝起きるのがつらい、午前中は何をするのも億劫、といった特徴的な症状が現れます。さらに、倦怠感やめまい、動悸、腹痛など、多様な症状を伴うこともあります。適切な検査と治療によって症状を改善し、日常生活を快適に送ることができるようになりますので、ぜひ最後まで読んで、起立性調節障害への理解を深めてみてください。
1. 起立性調節障害とは
朝、なかなか起きられなかったり、午前中は何をするにも億劫で、午後になると比較的調子が良い、そんな経験はありませんか?もしかしたら、それは「起立性調節障害」のサインかもしれません。思春期の子供に多く見られるこの症状、実は自律神経の乱れと深い関係があります。放っておくと学校生活や日常生活に大きな支障をきたす可能性もあるため、正しい理解と適切な対応が重要です。
1.1 起立性調節障害の定義と概要
起立性調節障害とは、自律神経系の機能がうまく働かず、立ち上がった際に血圧の調整がうまくいかなくなることで、様々な症状が現れる疾患です。自律神経は、体の機能を自動的に調節する神経系で、循環器、呼吸器、消化器など、生命維持に不可欠な機能をコントロールしています。この自律神経のバランスが崩れると、血圧を適切に保つことができなくなり、めまいや立ちくらみ、動悸、倦怠感など、様々な不調が現れるのです。
症状 | 説明 |
---|---|
めまい・立ちくらみ | 立ち上がった際に、目の前が暗くなったり、ふらつく症状 |
動悸 | ドキドキと心臓が速く鼓動する感覚 |
倦怠感 | 強い疲労感やだるさ |
頭痛 | 頭全体や一部が痛む症状 |
腹痛 | みぞおちや下腹部などに痛みを感じる症状 |
食欲不振 | 食事を摂る意欲が低下する症状 |
吐き気 | 吐きたい、もどしそうになる感覚 |
1.2 思春期に多い起立性調節障害
起立性調節障害は、特に思春期の子供に多く見られます。10代の約10%が起立性調節障害を経験するとも言われており、決して珍しい病気ではありません。思春期は身体が急激に成長する時期であり、自律神経のバランスが崩れやすいことが原因の一つと考えられています。また、学業や人間関係など、様々なストレスにさらされることも、起立性調節障害の発症に影響を与えている可能性があります。思春期特有の心身の変化が、自律神経の働きに影響を及ぼし、起立性調節障害を引き起こす一因となっていると考えられます。
思春期におけるホルモンバランスの変化も、自律神経の乱れに拍車をかける可能性があります。成長ホルモンの分泌や性ホルモンの急激な増加は、自律神経の調整機能に負担をかけ、起立性調節障害の症状を悪化させる要因となる場合もあるのです。
2. 起立性調節障害の症状
起立性調節障害は、多様な症状が現れることが特徴です。その症状は、立っている時や起き上がった時に特に顕著になります。主な症状として、めまい、ふらつき、動悸、息切れ、倦怠感、頭痛、腹痛などがあります。また、失神する方もいます。これらの症状は、午前中に強く現れる傾向があり、午後になると軽快することが多いです。
2.1 血圧との関係性
起立性調節障害は、自律神経の調節機能がうまく働かず、血圧のコントロールが不安定になることが原因で起こります。立ち上がった際に、重力によって血液が下半身に溜まりやすくなります。通常は自律神経が血管を収縮させて血圧を維持しますが、起立性調節障害の場合はこの機能が低下しているため、脳への血流が不足し、様々な症状が現れます。血圧の急激な低下は、めまいやふらつき、失神などの症状を引き起こす可能性があります。
2.2 朝起きられない、午前中辛いなどの特徴的な症状
起立性調節障害の患者さんは、朝起きるのが非常に辛い、午前中は何をするにも億劫、といった症状を訴える方が多くいらっしゃいます。これは、夜間に横になっている間に下半身に溜まっていた血液が、朝起き上がると同時に心臓に戻りにくくなるため、脳への血流が不足しやすくなるからです。午前中に症状が強く現れるのは、起立性調節障害の特徴的な症状の一つです。
2.3 倦怠感、頭痛、めまい、動悸、腹痛など多様な症状
起立性調節障害の症状は非常に多様で、人によって現れる症状も異なります。代表的な症状を以下にまとめました。
症状 | 説明 |
---|---|
倦怠感 | 身体がだるく、疲れやすい状態が続く |
頭痛 | 頭がズキズキしたり、締め付けられるような痛み |
めまい | 周囲がぐるぐる回っているように感じたり、ふらつく |
動悸 | 心臓がドキドキと速く鼓動する |
腹痛 | みぞおちや下腹部などに痛みを感じる |
立ちくらみ | 急に立ち上がった際に、目の前が暗くなったり、クラッとする |
失神 | 意識を失って倒れる |
吐き気 | 吐き気がする、実際に吐いてしまう |
食欲不振 | 食欲がわかず、食事がとれない |
顔面蒼白 | 顔が青白くなる |
これらの症状は、単独で現れることもあれば、複数同時に現れることもあります。症状の現れ方や程度は個人差が大きく、同じ起立性調節障害でも全く異なる症状を訴える場合もあります。
2.4 起立性調節障害と血圧の関係を理解する重要性
起立性調節障害は、血圧の変動と密接に関係しています。起立性調節障害の症状を理解し、適切な対処をするためには、血圧の変動メカニズムを理解することが重要です。 日常生活において、血圧の変化に気を配り、症状が現れた際には速やかに対処することで、症状の悪化を防ぐことができます。また、医師の指示に従い、適切な治療を受けることで、症状の改善が期待できます。
3. 起立性調節障害の原因
起立性調節障害は、様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられていますが、根本的な原因は完全には解明されていません。しかし、多くの場合、自律神経の乱れが中心的な役割を果たしていると考えられています。その他、生活習慣の乱れやストレス、成長期における身体の変化なども影響していると考えられています。ここでは、これらの要因について詳しく見ていきましょう。
3.1 自律神経の乱れが主な原因
自律神経は、体の機能を自動的に調節する神経で、交感神経と副交感神経の2種類があります。交感神経は活動時に優位になり、心拍数を上げたり血圧を上昇させたりします。一方、副交感神経は休息時に優位になり、心拍数を下げたり血圧を低下させたりします。起立性調節障害では、この自律神経のバランスが崩れ、立ち上がった際に血圧を適切に調整できなくなることが原因と考えられています。
3.1.1 自律神経のバランスが崩れるメカニズム
起立すると、重力によって血液が下半身に溜まりやすくなります。通常であれば、自律神経が働き、血管を収縮させて血圧を維持しますが、起立性調節障害の場合はこの機能がうまく働かず、血圧が低下してしまうのです。特に、思春期は自律神経が未発達なため、バランスを崩しやすく、起立性調節障害を発症しやすいと考えられています。
3.2 生活習慣の乱れやストレスの影響
不規則な生活リズム、睡眠不足、偏った食生活、運動不足などの生活習慣の乱れは、自律神経のバランスを崩し、起立性調節障害の症状を悪化させる可能性があります。また、精神的なストレスも自律神経に影響を与え、症状を誘発または増悪させる要因となります。
生活習慣の乱れ | 自律神経への影響 |
---|---|
睡眠不足 | 交感神経が過剰に優位になり、休息モードへの切り替えが困難になる |
不規則な食事 | 栄養バランスの乱れから、自律神経の機能を維持するのに必要な栄養素が不足する |
運動不足 | 血流が悪化し、自律神経の調節機能が低下する |
過度なストレス | 交感神経が過剰に働き、心身に負担がかかる |
3.3 成長期における身体の変化
思春期は、身体が急激に成長する時期であり、ホルモンバランスや自律神経の機能も不安定になりがちです。この時期の身体の変化は、自律神経の調節機能に負担をかけ、起立性調節障害を引き起こす一因となると考えられています。特に、身長が急激に伸びる時期は、循環血液量が増加するのに対して、血管の発達が追いつかず、相対的に血液量が不足し、血圧が低下しやすくなるため、起立性調節障害の症状が出やすくなります。
3.4 なぜ血圧が関係するのか
起立性調節障害の主な症状は、立ち上がった際に血圧が低下することに起因します。健常な人であれば、立ち上がると重力によって下半身に血液が溜まりやすくなりますが、自律神経が働き血管を収縮させることで血圧を維持します。しかし、起立性調節障害の場合はこの機能がうまく働かず、脳への血流が不足し、めまい、立ちくらみ、動悸、倦怠感などの症状が現れます。つまり、血圧の低下こそが、起立性調節障害の症状を引き起こす根本的な原因と言えるのです。
4. 起立性調節障害の検査
起立性調節障害の検査は、主に問診、血圧測定、そして必要に応じて追加の検査によって行われます。早期発見と適切な治療につなげるためにも、検査内容を理解しておきましょう。
4.1 起立性調節障害の診断基準
起立性調節障害の診断は、国際的な基準であるICD-10(国際疾病分類第10版)の診断基準に基づいて行われます。主な基準は以下の通りです。
基準 | 内容 |
---|---|
症状 | 立ちくらみ、めまい、動悸、倦怠感、頭痛、腹痛などの症状が出現する。 |
時間 | これらの症状は、起床後数時間以内に現れ、午後には軽快する傾向がある。 |
持続期間 | 症状が数ヶ月以上持続する。 |
他の疾患の除外 | 他の疾患(心疾患、神経疾患など)によって症状が説明されない。 |
これらの基準を満たす場合、起立性調節障害と診断されます。しかし、症状の出方や程度は個人差があるため、医師との丁寧な相談が重要です。
4.2 血圧測定を含む検査方法
起立性調節障害の検査で最も重要なのは、血圧測定です。特に、起立試験と呼ばれる検査が重要になります。これは、臥位(横になった状態)と起立位(立った状態)での血圧と脈拍の変化を測定する検査です。起立性調節障害の場合、起立後に血圧が低下したり、脈拍が急激に上昇したりする傾向が見られます。具体的には、起立後3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上、あるいは拡張期血圧が10mmHg以上低下した場合、起立性低血圧と診断されます。この起立性低血圧は、起立性調節障害の重要な指標となります。
4.2.1 その他の検査
血圧測定に加えて、必要に応じて以下の検査が行われることもあります。
- 心電図検査:不整脈などの心臓の異常がないかを確認します。
- 血液検査:貧血や甲状腺機能異常など、起立性調節障害に似た症状を引き起こす他の病気がないかを確認します。具体的には、赤血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値、白血球数、血小板数、血糖値、甲状腺ホルモン値などが測定されます。
- ヘッドアップティルト試験:起立試験で明確な結果が得られない場合に行われることがあります。専用の検査台で体位を変えながら血圧と脈拍を連続的に測定し、自律神経機能を詳しく評価します。
4.3 問診による症状の確認
問診では、医師が患者さんの症状や生活習慣について詳しく聞き取ります。具体的には、以下の項目について質問されることが多いです。
- どのような症状が現れるか(立ちくらみ、めまい、動悸、倦怠感、頭痛、腹痛など)
- 症状はいつ、どのくらいの頻度で現れるか
- 症状が現れる状況(起床時、食後、長時間立っている時など)
- 生活習慣(睡眠時間、食事内容、運動習慣など)
- 既往歴や服用中の薬
問診によって得られた情報は、診断の重要な手がかりとなります。そのため、医師に正確な情報を伝えることが大切です。症状を詳しくメモしておいたり、日常生活の様子を記録しておいたりすると、問診がスムーズに進みます。
4.4 他の疾患との鑑別
起立性調節障害は、他の疾患と症状が似ている場合があり、鑑別が重要です。例えば、起立性低血圧、貧血、甲状腺機能低下症、副腎機能不全、心疾患などは、起立性調節障害と似た症状を引き起こすことがあります。これらの疾患を除外するために、上記のような検査が行われます。正確な診断のためには、医師の指示に従って必要な検査を受けることが重要です。
5. 起立性調節障害の治療
起立性調節障害の治療は、症状の程度や原因、個々の生活状況に合わせて行われます。根本的な治療法はなく、症状を軽減し、日常生活を送りやすくするための対症療法が中心となります。多角的なアプローチが必要となるため、医師とよく相談しながら治療方針を決めていくことが大切です。
5.1 生活習慣の改善
起立性調節障害の治療において、生活習慣の改善は最も基本的な治療法です。自律神経のバランスを整え、症状の悪化を防ぐために、以下の点に注意しましょう。
5.1.1 規則正しい生活リズム
毎日同じ時間に起床・就寝し、体内時計を調整することで自律神経の乱れを整えます。睡眠時間をしっかりと確保することも重要です。睡眠不足は自律神経の乱れを悪化させる要因となります。
5.1.2 適度な運動
軽い運動は血行促進やストレス軽減に効果的です。ウォーキングやジョギングなど、自分に合った運動を無理なく続けましょう。激しい運動はかえって症状を悪化させる可能性があるので避けましょう。
5.1.3 バランスの良い食事
栄養バランスの良い食事は健康維持に不可欠です。特に、ビタミンやミネラルは自律神経の働きをサポートする上で重要です。インスタント食品や加工食品の摂りすぎは避け、野菜や果物を積極的に摂り入れましょう。
5.1.4 水分・塩分補給
水分不足は血液量を減少させ、起立性調節障害の症状を悪化させる可能性があります。こまめな水分補給を心がけましょう。また、塩分は血液量を維持するのに役立ちます。スポーツドリンクや経口補水液なども有効です。ただし、過剰な塩分摂取は高血圧のリスクを高めるため、適度な摂取を心がけましょう。
5.1.5 ストレスマネジメント
ストレスは自律神経のバランスを崩す大きな要因です。趣味やリラックスできる時間を持つなど、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。過度なストレスを感じた場合は、一人で抱え込まず、家族や友人、専門家に相談することも大切です。
5.2 薬物療法
生活習慣の改善だけでは症状が改善しない場合、薬物療法が検討されます。主に使用される薬には以下のものがあります。
薬の種類 | 作用 |
---|---|
昇圧剤 | 血管を収縮させ、血圧を上昇させる |
末梢血管収縮薬 | 静脈を収縮させ、心臓に戻る血液量を増やす |
薬の種類や服用量は、個々の症状や状態に合わせて医師が判断します。自己判断で服用を中止したり、量を変更したりすることは危険です。必ず医師の指示に従いましょう。
5.3 運動療法
運動療法は、起立性調節障害の症状改善に効果的です。特に、下半身の筋力トレーニングは、血液を心臓に戻すポンプ機能を強化し、めまいや立ちくらみを軽減する効果が期待できます。スクワットやカーフレイズなど、無理のない範囲で継続して行うことが大切です。また、ストレッチやヨガなども、血行促進や自律神経のバランスを整える効果があります。
5.4 血圧コントロールの重要性
起立性調節障害は、血圧の急激な変動が症状を引き起こすため、血圧コントロールは非常に重要です。上記で説明した生活習慣の改善、薬物療法、運動療法は、すべて血圧コントロールに繋がっています。日常生活においても、急な立ち上がりを避けたり、ゆっくりと動作を行うなど、血圧の急激な変化を防ぐよう心がけましょう。
5.5 日常生活でできる血圧対策
日常生活でできる血圧対策としては、以下の点が挙げられます。
- 弾性ストッキングの着用:下肢の血液が心臓に戻りやすくなるため、めまいや立ちくらみを軽減する効果があります。
- 腹帯や骨盤ベルトの着用:腹部を圧迫することで、血液が下半身に溜まるのを防ぎ、血圧の低下を防ぎます。
- 起床時の工夫:急に起き上がらず、まずはベッドの上で数分間座ってから立ち上がるようにしましょう。また、起き上がる前に軽いストレッチを行うのも効果的です。
起立性調節障害の治療は、長期にわたる場合もあります。焦らず、医師と相談しながら、自分に合った治療法を見つけていくことが大切です。
6. 起立性調節障害と間違えやすい病気
起立性調節障害は、その症状が多岐にわたるため、他の病気と間違えやすい場合があります。鑑別診断が重要となる代表的な病気をいくつかご紹介します。
6.1 起立性低血圧
起立性調節障害と非常によく似た症状を示すのが起立性低血圧です。どちらも立ち上がった際に血圧が低下することで症状が現れます。しかし、起立性低血圧は、自律神経の異常ではなく、血圧の低下自体が主な原因です。高齢者や脱水症状のある方に多くみられます。主な症状は、立ちくらみやめまい、失神などです。
起立性調節障害との大きな違いは、自律神経症状の有無です。起立性調節障害では、血圧の低下以外にも、動悸、息切れ、倦怠感、頭痛、吐き気など、様々な自律神経症状が現れます。一方、起立性低血圧では、これらの症状はあまり見られません。
6.2 貧血
貧血も起立性調節障害と似た症状が現れることがあります。貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンが減少した状態です。酸素を運ぶヘモグロビンが不足すると、全身に十分な酸素が供給されなくなり、めまいや立ちくらみ、動悸、息切れ、倦怠感などの症状が現れます。これらの症状は起立性調節障害の症状と似ているため、鑑別が必要です。
貧血の検査では、血液検査でヘモグロビン濃度や赤血球数を測定します。起立性調節障害ではこれらの数値に異常がない場合が多いのに対し、貧血ではこれらの数値が低下していることが特徴です。また、顔色が青白い、爪がもろい、疲れやすいなどの症状も貧血のサインです。
6.3 慢性疲労症候群
慢性疲労症候群は、強い疲労感が長期間続く病気です。原因不明の強い疲労が6ヶ月以上続き、日常生活に支障をきたす場合に慢性疲労症候群と診断されます。起立性調節障害と同様に、倦怠感、頭痛、めまい、微熱、睡眠障害などの症状が現れるため、鑑別が難しい場合があります。
慢性疲労症候群と起立性調節障害の鑑別は、疲労の程度や持続時間、自律神経症状の有無などを総合的に判断します。慢性疲労症候群では、身体的な疲労だけでなく、精神的な疲労も強く、集中力の低下や記憶力の低下などもみられます。また、起立性調節障害のように朝方に症状が強いといった特徴はあまり見られません。
病気 | 主な症状 | 起立性調節障害との違い |
---|---|---|
起立性低血圧 | 立ちくらみ、めまい、失神 | 自律神経症状が少ない |
貧血 | めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、倦怠感 | ヘモグロビン濃度や赤血球数が低下 |
慢性疲労症候群 | 強い疲労感、倦怠感、頭痛、めまい、微熱、睡眠障害 | 疲労の程度が強く、長期間続く。精神的な疲労も強い |
これらの病気以外にも、甲状腺機能低下症や副腎機能不全など、起立性調節障害と似た症状を示す病気があります。自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査と診断を受けることが重要です。正しい診断に基づいた治療を受けることで、症状の改善につながります。
7. 日常生活での注意点と対処法
起立性調節障害は、日常生活での工夫で症状を軽減できる場合が多くあります。規則正しい生活、適度な運動、ストレス管理、そして血圧変動への適切な対処が重要です。これらのポイントを踏まえ、具体的な方法を詳しく見ていきましょう。
7.1 規則正しい生活リズム
自律神経のバランスを整えるためには、規則正しい生活リズムを保つことが大切です。特に、睡眠時間と食事の時間を一定にするよう心がけましょう。毎日同じ時間に寝起きし、3食きちんと食べることで、体内時計が調整され、自律神経の安定につながります。
7.1.1 睡眠
睡眠不足は自律神経の乱れを招き、起立性調節障害の症状を悪化させる可能性があります。 毎日同じ時間に寝起きし、十分な睡眠時間を確保しましょう。個人差はありますが、7~8時間程度の睡眠を目標にすると良いでしょう。寝る前にカフェインを摂取したり、スマートフォンを長時間見たりすることは避け、リラックスできる環境を作ることも重要です。
7.1.2 食事
バランスの良い食事は、健康な身体を維持するために不可欠です。 特に、朝食は必ず摂るようにしましょう。朝食を抜くと、午前中の低血圧を招き、起立性調節障害の症状が悪化しやすくなります。また、塩分や水分の摂取量にも注意が必要です。塩分は摂りすぎると血圧を上昇させる可能性があり、水分不足は脱水症状を引き起こし、めまいや立ちくらみの原因となることがあります。バランスの良い食事を心がけ、適切な塩分と水分を摂取しましょう。
7.2 適度な運動と水分補給
軽い運動は、血行を促進し、自律神経の機能を高める効果が期待できます。ウォーキングや軽いジョギングなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけましょう。ただし、激しい運動は逆効果になる場合があるので、自分の体調に合わせて行うことが大切です。
7.2.1 運動の種類と頻度
ウォーキングやヨガ、軽い筋トレなど、無理のない範囲で継続できる運動を選びましょう。 毎日30分程度の運動を目標にするのが理想ですが、難しい場合は週に数回から始めて、徐々に頻度や時間を増やしていくと良いでしょう。運動中にめまいや動悸を感じた場合は、すぐに運動を中止し、休憩を取りましょう。
7.2.2 水分補給の重要性
水分不足は血圧低下を招き、起立性調節障害の症状を悪化させる可能性があります。 こまめな水分補給を心がけましょう。特に、起床時や入浴後、運動後などは意識的に水分を摂るようにしましょう。水やお茶、スポーツドリンクなど、ノンカフェインの飲み物を選ぶと良いでしょう。一度に大量の水分を摂取するのではなく、少量ずつこまめに飲むのが効果的です。
7.3 ストレスマネジメント
ストレスは自律神経のバランスを崩し、起立性調節障害の症状を悪化させる大きな要因となります。ストレスを溜め込まないよう、自分に合ったストレス解消法を見つけ、実践することが重要です。
7.3.1 ストレス解消法
方法 | 説明 |
---|---|
趣味を楽しむ | 好きなことに没頭することで、ストレスを発散できます。読書、音楽鑑賞、映画鑑賞など、自分が楽しめる趣味を見つけましょう。 |
リラックスする時間を作る | ゆっくりと湯船に浸かったり、アロマを焚いたりするなど、リラックスできる時間を作ることで、心身のリフレッシュができます。 |
睡眠時間を確保する | 睡眠不足はストレスを悪化させる要因となります。十分な睡眠時間を確保し、質の良い睡眠を心がけましょう。 |
誰かに相談する | 家族や友人、専門家などに相談することで、気持ちが楽になることもあります。一人で抱え込まず、誰かに話を聞いてもらいましょう。 |
7.4 血圧変動への対策
起立性調節障害は、血圧の変動が大きく関与しています。日常生活の中で、血圧の急激な変動を避けるための工夫をしましょう。急に立ち上がらず、ゆっくりと動作を行うこと、そして、長時間立ち続ける場合は、適度に休憩を入れることが重要です。
7.4.1 急な立ち上がりを避ける
急に立ち上がると、血液が下半身に集まり、脳への血流が一時的に不足し、めまいや立ちくらみを起こしやすくなります。 椅子から立ち上がる際や、ベッドから起き上がる際は、ゆっくりと動作を行うように心がけましょう。立ち上がる前に、数回深呼吸をするのも効果的です。
7.4.2 長時間立っている時の工夫
長時間立っている必要がある場合は、片足を少し高くしたり、足踏みをしたりすることで、血液の循環を促し、めまいや立ちくらみを予防することができます。 また、定期的に休憩を取り、座ったり横になったりするのも効果的です。こまめな水分補給も忘れずに行いましょう。
これらの日常生活での注意点と対処法を参考に、ご自身の症状に合わせて工夫してみてください。症状が改善しない場合や、日常生活に支障が出ている場合は、専門医に相談することをおすすめします。
8. まとめ
起立性調節障害は、特に思春期の子供たちに多く見られる疾患で、朝起きられない、倦怠感、頭痛、めまい、動悸など、多様な症状が現れます。その根本には、自律神経の乱れによる血圧調節機能の低下が大きく関わっています。立ち上がった際に、重力によって血液が下半身に滞り、脳への血流が一時的に減少することで、様々な症状を引き起こすのです。
診断には、問診に加え、血圧測定を含む検査が重要です。治療は、症状の程度や原因に応じて、生活習慣の改善、薬物療法、運動療法などを組み合わせて行います。規則正しい生活リズム、適度な運動と水分補給、ストレスマネジメントは、自律神経のバランスを整え、症状の改善に繋がります。また、症状悪化を防ぐためには、急な立ち上がりを避けたり、弾性ストッキングを着用するなど、日常生活での工夫も大切です。起立性低血圧や貧血、慢性疲労症候群など、似た症状を示す他の疾患との鑑別も重要です。気になる症状がある場合は、医療機関への相談をおすすめします。